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【マミー】映画をネタバレで考察!和歌山カレー事件の冤罪と真犯人がいる可能性は?

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1998年に起こった『和歌山カレー事件』を追った検証ドキュメント映画【Mommy-マミー-】が、2024年8月3日公開となります。

和歌山カレー事件』で犯人とされているのは林眞須美さん※映画の内容上、敬称付きで記します。

林眞須美さんは逮捕当時から現在に至るまで一貫して無罪を訴えていますが、2009年の最高裁にて死刑が確定しており、現在は大阪高裁にて収監中の身です。

映画【Mommy-マミー-】は、林眞須美さんの長男さんと監督の出会いから『和歌山カレー事件』についての考察が始まり、林眞須美さんは本当に犯人なのか、事件当時の環境や状況を、資料や証言を集め考察を繰り返しながら進み、その中には事件にまつわる新証言などのネタバレもあるようです。

そこで、この記事では『和歌山カレー事件』の概要とその矛盾点を拾いながら、映画【Mommy-マミー-】についてネタバレを含むその考察について調べてみました。

 

和歌山毒物カレー事件を検証・考察する映画【マミー】

やまこ
やまこ
『和歌山カレー事件』って、なんとなく聞いたことはあるけど、どんな事件だったっけ?

今から26年前の『和歌山カレー事件』は、現在の40代以上の方であれば周知率の高い大事件ですが、若い方にはなんとなく知っている程度に風化しつつある事件でもあります。

そこで、まずは1998年の『和歌山カレー事件』について、事件の概要と当時の状況についてまとめてみました。

 

和歌山毒物カレー事件とは?

1998年7月25日、和歌山市園部の町内会で行われた夏祭りで配られたカレーに毒物が混入されていた、これがこの『和歌山カレー事件』の始まりです。

犯人とされたのは、カレーの見張り番をしていた林眞須美さん。

祭は18時スタートでしたので、カレー鍋に子供が近づいて怪我をしないように1時間に1人、各班の班長が担当する事が決められていました。病院での精密検査があったため調理に参加しなかった林さんは、もともと近隣の主婦から良いようには思われていなかったようですが、見張り時間が近づいた頃にはちゃんと現場に来ています。

調理に来なかった林眞須美さんにについて、調理担当の主婦の間では

『夜中にピアノを弾いて迷惑』

といった普段の不満も相まって少々愚痴がこぼされていたようですが、林眞須美さんがカレー鍋の見張りに来た時には多少の気まずさを残すのみで、12時20分頃からは林眞須美さんが1人でカレー鍋の見張りをしていたのだそうです。

1人1時間の見張りですから、代わりの人と交代してからの林眞須美さんは自宅に帰っていたようですが、18時になり祭が始まると事件が起こります。

無料配布されたカレーライスを食べた67人が体調不良を訴え、腹痛や吐き気を催すといった阿鼻叫喚の状態となってしまったのです。

すぐにカレーの配布は止められましたが、結局4人の方が亡くなってしまいます。

当初は症状がよく似た食中毒が疑われていましたが、亡くなった方の体内、またカレーの残りからヒ素が検出された事で事件は大きく展開し始めます。

2つあった鍋のうち1つだけ、鍋の中に150グラムものヒ素が混入されていたとのニュースは日本中を駆け回り、和歌山の穏やかな町に大量のメディアが集まる大騒ぎとなったのです。

事件発生から約3か月後の10月4日、警察が容疑者として逮捕したのが、林眞須美さんでした。

この時の逮捕容疑は保険金詐欺と保険金殺人未遂事件。実は林眞須美さんの周囲では、夫・健治さんを含む数人に対する保険金詐欺の疑惑がかかっており、この時はカレー事件への独の混入の確たる証拠はなかったようですが、その前に別件での逮捕となったようです。

この逮捕から2ヵ月後の12月9日、林眞須美さんはカレー鍋に亜ヒ酸を混入したとして再逮捕され、幾度かの裁判を経た2009年の最高裁にて死刑が確定したのでした。

検察が林さんを『和歌山カレー事件』の犯人だと断じた理由は大きく4つ挙げられています。

  • 1:カレーに混入されたものと成分的に同じ亜ヒ酸が林さん宅にもあった。
  • 2:林さんの頭髪から高濃度のヒ素が検出された。これにより、普段からヒ素を取り扱っていたと判断。
  • 3:祭り当日、カレー鍋に異物を混入させるタイミングは林さんにしかなかった。
  • 4:カレー毒物混入事件の前から何度もヒ素や睡眠薬を用いた殺害行為を実行していた。

この4が保険金殺人未遂事件の事で、『和歌山カレー事件』の前1年半以内という近接時期に夫・健治さん含む4人の食べ物にヒ素を混入、体調不良にして保険金をだまし取っていたというものになります。これを裏付けるように1と2でも、普段からヒ素が近くにあったとされたようですね。

しかし逮捕の決め手となったのは3を補強した目撃証言。このカレー鍋に異物混入について、林さんがカレー鍋の蓋を取る姿を近隣の住民が見ていた、との目撃談が出てきたのです。

こうして逮捕された林眞須美さんは、確たる物的証拠のない状況証拠のみで確定死刑囚とされている…これが現時点での『和歌山カレー事件』における概要となります。

 

マスコミによる狂乱の報道合戦が作り出したものはなんだったのか?

『和歌山カレー事件』を象徴するようなインパクトのある映像があります。

それは、自宅の庭でホースから水を撒いている林眞須美さんが、自宅の周りをぐるりと取り囲むように迫る大量のマスコミに向かって水をかける映像です。

薄く口元を緩ませながら水をかける林眞須美さんの姿は、4人が亡くなる事件を起こした上に悪びれもせず人に向かって水をまき散らす悪女、といった悪印象を強く植え付けるものでした。

しかしこの時、林眞須美さんは別に逮捕されていたわけではありません。様々な憶測や保険詐欺事件で警察が動いていたこともあってか、犯人は林さんなのではないか?という疑惑しかない状態で自宅周りをぐるりと取り囲むほどのマスコミが押しかけていたのです。

当時の映像を見るとよく分かりますが、田舎の穏やかな住宅街、その決して広くはない住宅道路をみっちりと覆い潰すくらい左右いっぱいに広がり、何列にも重なりながら歩くマスコミの姿には、ある種の恐怖すら覚えます。

この加熱する報道の裏には、1995年3月20日に起こった無差別テロ『地下鉄サリン事件』の恐怖があったのかもしれません。

これは、宗教団体・オウム真理教が東京の霞が関を通過する朝のラッシュ帯の地下鉄線で、5両の電車に猛毒の化学兵器・サリンをまき散らした事件です。この事件は死者3人、負傷者5,800人以上という被害者を生み、日本を恐怖のどん底に突き落としました。

『地下鉄サリン事件』により、毒物を使った無差別殺人に対して強い恐怖心を植え付けられていた日本人にとって『和歌山カレー事件』もまた、お祭りという楽しい日常を打ち壊すものとして映ったでしょう。

そこにマスコミが飛びついたようにすら見える当時の報道の過熱ぶりは、報道マンとして常に持っていなくてはならないだろう冷静な客観視点を失い、林さんを犯人に仕立て上げる為に騒いでいるようにすら見えるほどです。

SNSが発達し、誰もが意見や情報を書き込み公開できる現在と違い、情報源が限られ、情報を探す人よりも受け取る人の方が圧倒的に多かった1998年当時では、マスコミの情報を鵜吞みにすることが今よりもずっと多かったでしょう。

毎日のように流される『和歌山カレー事件』の報道は、林眞須美さんがいかに怪しいかを垂れ流し、世間もまた

『保険金詐欺を起こすような女だもの。無差別殺人くらいやっててもおかしくない』

といった風潮に染まっていたのではないかと思います。

 

映画【マミー】のあらすじから考察する冤罪と真犯人の可能性

『和歌山カレー事件』を取り上げたドキュメント映画『Mommy-マミー-』は当初、テレビ放送を目指していたのだそうです。

やまこ
やまこ
いくつかのTV局に持ち込んだけど

『死刑判決が確定している事件は扱いが難しい』

って断られちゃったから映画公開になったんだって。

テレビの方がより多くの人の目に触れるだろうとは思っても、なかなか難しいものなのね。

 

検証ドキュメントを映画として完成させた【マミー】のあらすじ

『和歌山カレー事件』が起こった1998年から約半世紀が経った2024年8月3日に公開される【Mommy-マミー-】は、事件の犯人とされている林眞須美さんの死刑判決への疑念を再検証する作品です。

事件当時の目撃証言や化学鑑定への反証を試みながら、保険金詐欺事件との関係も読み解いていく構成で、夫の健司さんなどへのインタビューではその実態があけすけに語られています。

和歌山カレー事件』は林家を壊滅に追い込み、4人いた林眞須美さんのお子さんはぞれぞれに大変な人生を歩まざるを得ませんでした。確定死刑囚の子供として生き、現在は母・林眞須美さんの冤罪を訴えて活動している長男さんは

『母には、悲惨な事件を起こした女というイメージが持てない』

と語り、どうして母の無実を信じるようになったのかを明かします。

【Mommy-マミー-】の二村真弘監督は、捜査や裁判、報道にかかわった人々を訪ねながら独自調査を進め、林眞須美さんが冤罪出る事の突破口を探っていくのですが、やがて慢心と焦りから取材中に一線を越してしまって…というのが【Mommy-マミー-】のあらすじとなります。

 

死刑判決に冤罪の可能性はないのか?ネタバレで考察

【Mommy-マミー-】では、確定死刑囚・林眞須美さんに冤罪の可能性はないのか、そこに焦点を当てて考察していく映画となっています。

公開前の試写では、ご覧になった方の口コミとして

女性
女性
事件当時の報道によって、林眞須美に対するイメージが『悪女』として固定されてしまっている方は是非見て欲しい。

あの頃やりたい放題に人のプライバシーを暴き立てていたメディアがやるべき事が全て詰まっている作品。

男性
男性
『偏見とイメージ』は何からどうやって植え付けられてしまうのか…。

普段の事件や事故についても真実を知らず報道されるイメージだけで語ってしまっているのではないかと我が身を振り返ってしまう作品だった。

という『確定死刑囚』にたいする『冤罪』というあってはならない疑念と共に、自分たちが普段どれだけイメージで物事を判断してしまっているのか、など気付きについて述べられる方が目立ちました。

映画【Mommy-マミー-】では様々な観点から当時の事件捜査や目撃証言に反証を試みています。

『状況証拠だけで死刑にまでもっていく判決はおかしいのではないか?』

と裁判記録を見返す事で矛盾点にいくつも気付くのですが、その1つが逮捕の決め手となった目撃証言です。

『林眞須美さんがカレー鍋の蓋を開けていた』という目撃証言。しかしこれは、現場検証すると大きな矛盾を生む証言でしかないことが分かります。

目撃者の見た場所からの方向と角度などを検証すると、目撃者が見たカレー鍋はヒ素が入っていた方の鍋ではないのです。

そもそもカレー鍋を開けたのは林眞須美さんではなく次女、との証言もあるようですが、仮に鍋の蓋を開けたのが林眞須美さん本人だったとしても、その鍋にヒ素は入っていなかったのですから、目撃証言に信憑性はありません。

また、『保険金詐欺を起こすくらいだから、カレーにヒ素を入れててもおかしくない』という世間のイメージについても、おかしな点があります。

この保険金詐欺は林眞須美さんと夫の健司さんも事実を認めているのですが、しかし『和歌山カレー事件』が起こるまでは表沙汰になっていませんでした。

保険金詐欺は、被害者とされた人物ともグルになってわざとヒ素を飲み体調を崩して入院、この流れでバレることなく大金を得ていたと罪を認め、健治さんは服役を終えすでに社会復帰されていますが、ここで少しおかしなことに気付きませんか?

『和歌山カレー事件』が起こるまで保険金詐欺がバレていなかったのであれば、林眞須美さんがわざわざヒ素を使って無差別殺人事件を起こし世間の注目を集める必要があったか、と。

林眞須美さんの夫・健治さんもまた妻の無実を訴えており、その理由は単純明快『事件を起こす動機がないだろう』というものです。

当時のマスコミは事件の動機について、カレーの見張りに行った時に悪口を言われていたから殺そうと思った、と報道していますが、健治さんが言うには

『眞須美が怒ったらそんな陰険な真似じゃなくて直接怒鳴り込むよ』

とのことで、確かに執拗なマスコミの攻勢にホースで水をかける映像からも、林眞須美さんの強気な性格は見て取れます。

『和歌山カレー事件』について独自に取材を進めてきたノンフィクション・ライターの片岡健さんは、当時のマスコミ取材について、1つの会社が新しい情報を仕入れると、みんなが我も我もと追随して書く、その裏付けはどんどん甘くなり結局いい加減な記事が多くなっている印象を受ける、とお話しされていました。

林眞須美を犯人に、といった空気に満ちた中で逃げおおせた真犯人がいるのではないか…林眞須美さんが冤罪だとするならば、ヒ素を混入した人物は他にいるはずです。きっとそれは、町内会の祭りに紛れ込んでいても不自然じゃない人のはず。

となると、やはり近隣の人物が真犯人なのか…こういった矛盾点や疑念を1つ1つ解き明かそうと製作された【Mommy-マミー-】は、いったいどんな形でラストを迎えるのでしょうか?

 

まとめ

今回は2024年8月3日公開の映画【Mommy-マミー-】について、ネタバレを含みながら調べてみました。

和歌山カレー事件』を様々な角度から再検証し、考察しながら進められた取材がドキュメント構成で映画化された【Mommy-マミー-】では、確定死刑囚として服役中の林眞須美さんについて冤罪ではないか?との疑念が映し出されています。

しかし公開前にもかかわらず【Mommy-マミー-】には注目が集まりすぎたのか、母の無実を信じて普段から活動をされている長男さんに対する脅迫が寄せられたりと、波乱の幕開けとなりそうです。

あらすじにあった『焦った監督が越した一線』に関するネタバレは、どなたの感想を見ても全く書き込まれておらず分かりませんでしたが、そこはきっと直接映画から情報を得た方が良いという事かなと思っています。

この作品が『和歌山カレー事件』への認識をひっくり返せるかは分かりませんが、しかしマスコミからの情報に一喜一憂して疲れてしまうコロナ禍を超えた私たちであれば、当時の状況を違った角度から見られるのかもしれません。

映画【Mommy–マミー】は2024年8月3日公開です。

前売り券には事件の年表と最高裁判決文を掲載した鑑賞ガイドも付いていますので、是非スクリーンで当時の異常な喧騒と、それに対する反証をご覧になってみませんか?

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