月(宮沢りえ主演)映画はどこまで実話なの?事件や主人公のモデルについても調査
2023年10月13日公開となった映画『月』は、『舟を編む』の石井裕也監督、宮沢りえ主演の障害者施設で実際に起きた殺傷事件がモチーフになっています。
実話を題材にしたわけですが、どこまで忠実に描かれているのかが気になるところです。
そして、事件や主人公のモデルはあるのか。
今回は宮沢りえ主演映画『月』の公開を前に、実話がどこまで描かれ、事件のモデルなどを調査してみました。
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月(宮沢りえ主演)映画はどこまで実話なの?
実際の事件をモチーフにしたということは、実際の事件をそのまま映画にしたわけではありません。
相模原市で2016年7月26日未明で起きた、知的障害者施設『津久井やまゆり園』で起きた大量殺傷事件
著者は、もっと深く世の人々に伝えなくてはいけないと思ったその表現の動機によって、実際の事件の情景や思想を読み取り物語にしたのです。
もっと簡単にいえば、この映画は「そもそも実話なのか?」「実話ならどこまでなのか?」となろうかと思います。
月の映画はそもそも実話なの?
映画『月』の原作は、辺見庸さんが実際に起きた障害者施設での殺傷事件から2017年、長編小説『月』を書きました。
障害者施設での殺傷事件とは、介護職員の一人が施設の職員含め障害者を次々と重軽傷及び殺害した事件。
辺見さんが実際に起きた事件を知ったとき、事件を起こした個人ではなくそうさせてしまった社会的な背景や、人間存在の深部に切り込まなくてはいけないと感じ小説にしたのです。
「語られたくない事実」に踏み込む必要性を感じたということでしょう。
この映画は実話を元に、社会が蓋をしてきた事実を露わにして宮沢りえの視点を通して、考えさせられる映画になっているのね。
月の映画はどこまで実話?あらすじも紹介
堂島洋子(宮沢りえ)は、元有名作家だが今は小説が書けなくなっていた。
洋子の夫・昌平(オダギリジョー)は、洋子のことを「師匠」と呼び、つつましく暮らしていた。
洋子はとある森の奥深い場所にある[重度障害者施設]で働くことになった。
そこで見たものは、職員の障害者に対する心ない扱い方や暴力を目の当たりにし驚愕する。
このことを訴えるも、誰も聞き入れる者がいなかった。
洋子は世の中の理不尽さに憤りを覚えていたが、同じ想いでいたのは同僚の介護職員のさとくんである。
そして、彼の中で正義感や使命感がやがて怒りとなって頭をもたげ始めていた。
今回の映画『月』は、介護職員が次第に心が病んでいく過程や、介護を受けている障害者の人権がテーマになっています。
それを宮沢りえが演じる主人公・堂島洋子の視点によって、介護する側・される側の両面を見つめていく構成です。
どこまで実話かというよりも介護職の実態とか、障害者の人権にフォーカスして考えさせられる映画になりそうね。
そうね、メディアで取りざたされなかった部分が浮き彫りになるという感じね。そう考えるとちょっと怖い映画だわ!
今回の映画は正に実際に起きた事件を軸に、メディアでは語られなかった部分を垣間見ることになります。
事件や主人公のモデルについても調査
今回の映画で、モデルとなった事件と主人公のモデルはいるのか?を調査してみました。
月の映画のモデルになった事件とは?
出典元:https://www.tst-movie.jp/
この映画のモデル・軸となった事件は、先の章でもご紹介しました以下の事件です。
相模原市で2016年7月26日未明で起きた、知的障害者施設『津久井やまゆり園』で起きた大量殺傷事件
犯人は、この施設の元職員・植松聖(うえまつ さとし/当時26歳)でした。
当時、植松は自宅にあった柳刃包丁など計5本を所持してスポーツバッグに入れ、施設内に侵入しました。
なんで包丁が5本も必要だったのかしら?
なんでも、刺殺する間に包丁の刃が折れたり欠けたりしたときに、新しいものに取り換えていたらしいわ!もう、用意周到だよね!
職員を結束バンドで拘束し、「障害者を殺すから騒ぐな」と言い放ったそうです。
入所者19人刺殺し、入所者と職員計26人に重軽傷を負わせたのです。
これは、日本で発生した殺人事件で殺害人数が19人というのは戦後(第二次世界大戦)後ではもっとも多い数で、戦後最悪の「大量殺人事件」でした。
植松は2020年に死刑判決が言い渡され、当時控訴していた植松ですがそれを取り下げたことで死刑が確定しました。
植松は入所者の殺害を認め、「障害者なんかいなくなってしまえ」と供述していたそう。
映画化されること自体が、この事件がどれだけ人々の心に影を落としたかという証のようですね。
月の映画の主人公のモデルはどんな人?
出典元:https://www.fashion-press.net/
この映画の重要なカギを握る主人公・堂島洋子(宮沢りえ)と、障害者を刺殺してしまう犯人を演じるのは、洋子の同僚の職員・さとくん(磯村勇斗)。
さとくんのモデルは、実際の事件の犯人・植松がモデルです。
では、主人公の堂島洋子のモデルはいるのでしょうか?
実際の事件では洋子のモデルは?
2016年に起こったやまゆり園の事件で、堂島洋子のモデルかと思われる人物は特定できなかったのです。
やまゆり園には女性職員もいましたが、植松に結束バンドで縛られ障害者が入所している部屋を一つ一つ周らされました。
植松が「ここはしゃべれるか?」と聞かれ「しゃべれません」と答えると、部屋に侵入し容赦なく包丁を振り下ろしたといいます。
植松は、意思疎通ができない入所者は殺すという目的だったのよね。
それが分かった女性職員は「しゃべれます。みんなしゃべれます」と泣きながら訴えたそうです。
しかし、次第に植松は自ら障害者に声を掛け、返答できない人物は「こいつ、しゃべれねえじゃん」というと意思疎通ができないとみなし、刺殺していったといいます。
女性職員に関する情報はこれだけだったので、この映画の主人公・堂島洋子にあたる人物は見つけられませんでした。
堂島洋子のモデルはいなかった?
さまざまな情報を見ていく内、ふと気づいた点があります。
それは、堂島洋子が障害者施設に勤務し献身的に障害者に寄り添い介護する姿勢は、当時、植松がこのやまゆり園で働き始めたときの姿と似ていると思いました。
植松は、当時やまゆり園で3年ほど働いていたそうよ。
その間、入所者と笑顔で接し入所者のことを「可愛い」とも言っていたと、当時の同僚職員の供述があります。
しかし植松は逮捕後、拘置所で記者からの取材を受け、入所者に手荒な扱いをしているのを見たり聞いたりしていたと話したそうです。
植松はそのことを、指摘したことがあったけど、同僚に「3年もいればわかるよ」といわれたそうよ。
映画でも、堂島洋子が施設内での暴力に対して訴えても誰も相手にされなかった場面がありました。
ここまでは、植松と洋子が非常に似ていると感じます。
その後の植松と記者のやりとりです。
記者「自分も暴力をしたのか?」
植松「無駄な暴力はしたことありません。」
記者「無駄じゃない暴力とは?」
植松「鼻を小突いた程度です」
植松はきっとこのあたりから、障害者への思想が変わってきたのかもね。
堂島洋子にモデルがいるとすれば?
出典元:https://www.oricon.co.jp/
堂島洋子にモデルがいるとすれば、それは植松の「善」と「悪」の部分で、洋子は「善」の部分ではなかったのかと思います。
映画で敢えて洋子に犯罪を犯させず、「さとくん」というキャラクターを入れたのは、洋子はこの介護する側とされる側の両面を洋子視点で見るためと考えました。
なるほど。洋子も犯罪者になりうる可能性は十分にあったけど、敢えて両者を見る立ち位置にしたわけね。
これはあくまで私の推測です。
月のまとめ
今回は、宮沢りえ主演の映画『月』について、この映画は実話だったのか?
どこまでが実際の事件に基づいていたのか?
さらに、モデルとなった事件の概要と実話をどこまで描いているのか?
主演の宮沢りえのモデルはいたのか?などを調査してみました。
映画『月』は、実話から実際の介護施設の現状や、障害者の人権などを考えるために語られなかった事実を浮き彫りにした映画だったといえるでしょう。