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遠い山なみの光(映画)は怖い?どんでん返しや縄の理由についても考察

kuroneco
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映画【国宝】に沸く日本映画界に、今年また新たな秀作が公開されます。

それが、2017年にノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロさんのデビュー作を映画化した【遠い山なみの光】です。

デビュー作でもある『遠い山なみの光』は、イギリスの権威ある文学賞の1つである王立文学協会賞を受賞している傑作。

既に多くの読者を抱える人気作ですが、その感想を調べてみると

『あの縄の意味はなに?』

『最後のどんでん返しが凄い

といったものが多く見受けられました。

また、終始不穏な空気を感じ取る読者も少なくないため、人によっては怖いと感じる事もあるようです。

そこで今回の記事では、映画【遠い山なみの光】は怖いのか、また作中に出てくる縄の役割とどんでん返しについて調べてみました。

 

映画【遠い山なみの光】ってどんな話なの?

やまこ
やまこ
カズオ・イシグロさんって出身は長崎だけど、幼少期にイギリスに渡られているのよね。

日本にいらした時間はそう長くないようだけど、作品は日本を舞台にしたものも多い印象だわ。

『遠い山なみの光』がどんな話なのか気になるね。

 

映画【遠い山なみの光】の原作とは?

映画【遠い山なみの光】は、カズオ・イシグロさんによる同名小説が原作となっています。

デビュー作である『遠い山なみの光』は、1982年にイギリスで刊行されると現在の王立文学協会賞を受賞するという快挙を成し遂げ、その2年後には『女たちの遠い夏』という邦題で日本でも発刊されました。

りと
りと
この時の翻訳者である小野寺健さんは、『女たちの遠い夏』以降もカズオ・イシグロさんの書籍を何冊も訳されていますね。

その後、2001年にはタイトルを『遠い山なみの光』に改題されています。

もともとのタイトルである『女たちの遠い夏』をご存じの方の中には、英語原作を直訳して改題された『遠い山なみの光』よりも、元のタイトルの方が内容を上手く表していると感じる方もいるようです。

そう感じてしまうのは、小説の内容が2人の女性の人生を軸に動いているからでしょう。

戦後間もない長崎を舞台に描かれている今作は、主人公・悦子が出会うシングルマザーの佐知子との両極端な『女の人生』が根幹となっています。

戦争未亡人が多い時代に、夫と一緒に暮らしている悦子には安定した暮らしがありますが、片や不安定な自分の足元固めのためにアメリカ軍人に未来を託そうと様々な男の間でふらつく佐知子。

娘・真里子を放置してでも男のもとに通う佐知子と、そんな母の影響かメンタルが不安な真里子の姿は、知らず悦子の気持ちにさざ波を立てるのです。

小さな嘘が多く人間的に尊敬できない夫と、そんな夫とは違い何かと自分を気遣ってくれる舅との生活を送る悦子にとって、奔放に見える佐知子としょっちゅう家出する真里子の騒動に巻き込まれたあの夏は、老年を迎える頃になっても強く残る思い出となっていました。

結局日本を出たのは、アメリカ人男性を求めた佐知子ではなく悦子です。

彼女は夫と別れ娘・景子を連れて渡英し、イギリス人男性との間にも娘・ニキを授かりました。

しかし、長らく引きこもり状態だった景子が自死したことで、彼女は自分の人生を振り返る事になったのです。

戦争に負け傷つきながらも、何とか這い上がり立ち直ろうとしていたあの戦後復興期は、日本でもまれに見る活気にあふれた時代でもあったでしょう。

時代に翻弄されながら生きる女性の姿を描いた物語が、この『遠い山なみの光』なのです。

やまこ
やまこ
改題された『遠い山なみの光』でも、人々が求める光がどれだけ渇望されているか伝わってくるけど、元のタイトルの『女たちの遠い夏』は主人公たち女性2人にそぽっとが充てられている感じがするわね。

 

映画【遠い山なみの光】のあらすじまとめ

イギリスに住むニキ(カミラ・アイコ)の母・悦子(吉田羊)は日本人です。

第二次世界大戦後に渡英し、イギリス人の父と結ばれた悦子は、あの原子爆弾が落とされた長崎に住んでいました。その半生を作品にしたいと考えたニキは、母にその想い出を聞かせて欲しいと頼みます。

悦子の語る彼女の記憶には、活気あふれる戦後復興期の長崎で出会った、佐知子(二階堂ふみ)という女性が強烈に残っていました。幼い娘を連れたシングルマザーの佐知子と過ごしたひと夏は、当時の悦子(広瀬すず)の人生観を大きく変える出来事だったのでしょう。

母の記憶の断片を辿ることで、ニキの胸は大きく揺さぶられます。

母のその強烈な記憶にはどうも矛盾がある、と気付いたニキは、

母は嘘をついているのではないか?

と考えるようになるのです。

果たして、母・悦子が隠した嘘とは、また意外な真相とはいったい…。

やまこ
やまこ
かなり謎めいていて面白そうね!
りと
りと
戦後80年の今年、2025年に公開されるに足る重厚な物語ですよね。

キャスト陣もかなり豪華となっています。

主人公・悦子は、吉田羊さんと広瀬すずさんのWキャストで演じられています。

若かりし頃の葛藤を広瀬すずさん、熟成された老年期を吉田羊さんが演じられるという事で、悦子というキャラクターの人生により一層の深みを与えている事が期待されます。

また、そんな悦子の人生を大きく揺るがす存在として描かれる佐知子には、これまた卓越した演技力で存在感を残してきた二階堂ふみさんがキャスティング。

りと
りと
 夫がいて生活が安定している悦子と、シングルマザーでアメリカ人男性の庇護を求める佐知子の対比を、広瀬さんと二階堂さんが演じるのは、かなり見応えがありそうですね。

そして、物語の主軸を担う女性キャストの他にも、悦子の夫・緒方二郎には松下洸平さん、二郎とは少し心の隔たりがある悦子の舅・緒方誠二に三浦友和さんがキャスティングされています。

お二方とも、爽やかで誠実な印象の強い役者さんですが、少々問題を抱えたこの父子の間をどんな府に見せてくれるか楽しみです。

やまこ
やまこ
なんとなく雰囲気の似たお二人なだけに、親子役がとってもハマってそうなのも良いね!

 

映画【遠い山なみの光】は怖いの?どんでん返しの謎に迫る

やまこ
やまこ
戦争が絡むお話しみたいだし、【遠い山なみの光】って怖いのかな?

 

映画【遠い山なみの光】はホラーなのか?怖いと言われる所以について

映画【遠い山なみの光】の原作は、既に刊行されてから40年以上たっているため、多くの読者がいらっしゃいます。そんな読み手の多くが

女性
女性
これはホラーなの?すっごくゾクゾクしながらページを捲ったわ。

という感想を漏らしていますが、その理由はいくつかあるようです。

1つは、自分の過去を話しているはずなのに、妙に噛み合わない点があること。

ニキに請われる形で半生を振り返り始めた悦子ですが、思い出の中の佐知子との会話が成り立っていないように感じる箇所があるようなのです。

それは、佐知子の破天荒な性格故のものなのかも分かりませんが、読んでいて会話の気持ち悪さが怖かった、という方もいらっしゃいましたので、理解し辛い部分が不気味さを演出しているのかもしれません。

2つ目は、作中で印象的な役割をする縄の存在感でしょう。

まず、悦子の娘・景子の自死に使われたのが縄である事、また作中で『女の幽霊が見える』と訴える真里子が異常に縄を恐れていることなど、物語の要所要所に縄が登場する事から、読者の中には

男性
男性
真里子の動きと縄の登場が重なるから、もしかして縄で真里子を…?という恐ろしい想像をしてしまう。

と考えた方もいて、物語を揺さぶってくる縄の存在が恐怖心を煽ってくるようですね。

 

映画【遠い山なみの光】で縄が持つ役割とラストのどんでん返しとは?

映画【遠い山なみの光】のラストには大きなどんでん返しが待っています。

しかし、そのどんでん返しを明確に表現されたものは見つかりませんでした

原作小説【遠い山なみの光】は、一度読んだだけでは理解しきれない物語の奥深さがあるため、安易にネタバレするのではなく読んだ人自身に感じ取ってもらいたい、と考える方が多いようなのです。

そこで、いくつかの考察をまとめてみました。

まず縄の役割ですが、先に述べたように物語の中に漂う不気味さを高めるための小道具という考え方が1つ、それから佐知子の娘・真里子が

『母親に命を握られている』

と感じる象徴として縄を警戒していたんじゃないか?という考え方もありました。

真里子は戦火の元逃げる途中で、命を諦め自分の子供を殺める母親の姿を見ていますし、その後ネコを目の前で自分の母に殺される、というショッキングな経験も重ねています。こういったトラウマから縄を強く警戒し、恐怖心を抱くようになったのかもしれません。

そしてラストのどんでん返しについても、いくつかの考察が見つかりました。

多かったのは、悦子が娘の景子に真里子を重ねて見ている、というものです。

母親によって渡米させられることを嫌がっていた真里子。彼女は結局、母・佐知子の結婚相手が神戸の人との事で日本にとどまりましたが、景子は悦子によって日本を離れています。

しかも彼女はイギリスの生活にも新しい家族にもなじめず、1人暮らしの部屋に引きこもった末に自死していますから、

女性
女性
悦子は、自分が景子を連れてきてしまったせいであの子は死んだ、と考えているんじゃないだろうか?

あんなにも嫌がっていた真里子を見ていたのに自分のエゴを押し通してしまった、という後悔が過去の思い出話の矛盾点を生んでいるように感じる

という考察です。

また、この悦子と佐知子母娘の関係については、全て悦子の妄想なのではないか?という考えも見られました。嫌がる娘を連れて渡英した自分を正当化するために作り出した幻想、というわけです。

戦後復興に沸き立ち活気あふれていた日本と言えど、あの時代に女性が一人で生きていくのは並大抵のことではありません。

まして子供がいれば尚更です。生活の安定や心の平穏を求めて人生を作り替えたい、と願う事は決して身勝手な考えとは言えなかったでしょう。

とはいえ、その結果が娘の自死、となれば自分の決断を後悔するのも分かります。そのため、ニキに日本にいた頃の事を聞かれた時、佐知子と真里子という親子を作り出してしまった…だからこそ、佐知子との会話の齟齬や矛盾があるのではないか、という考えです。

りと
りと
もしかしたら佐知子は本当にいたのかもしれないけど、記憶というのはどうしても薄れていくものだし、また美化されやすいものでもありますよね。

ニキが抱いた違和感は、記憶の改ざんにあるのかもしれませんね。

最後に、景子は夫の子ではないのではないか?と考える方もいました。夫よりもその父との描写の方が濃く、色味があるように感じられるからだそうです。

舅はもともと悦子の勤める学校の校長を務めて居たという関係性もあり、彼女も夫以上に親近感を覚えているのでは?という描写が作中にも見られます。

このように、読み手によって色んな解釈が出来るからこそ、『遠い山なみの光』は今でも長く愛される作品となっているのでしょう。

やまこ
やまこ
あからさまな表現がされているわけではありませんが、深読みすればするほど人物たちの関係性が変わって見えるという事で、多くの読者を惹きつけたんだね~。 
りと
りと
解釈や考察が沢山あるこの作品を映画化した【遠い山なみの光】のラストが、どんなどんでん返しを見せてくれるのか楽しみですね。

 

まとめ

今回は映画【遠い山なみの光】について、その内容は怖いのか、また縄の役割とどんでん返しについて調べてみました。

【遠い山なみの光】の原作は、イギリス在住の作家・カズオ・イシグロさんの処女作『遠い山なみの光』です。

戦後80年の今年・2025年に、戦後の長崎を舞台にした今作が映画化されることについてカズオ・イシグロさんは、

『今年は日本のみならず世界にとっても節目の年である。だからこそ、戦争を知らない若い人たちにも、世界中が混乱していたあの時代を思い出してもらいたい』

とお話しされており、映画【遠い山なみの光】のエグゼクティブ・プロデューサーとしてもクレジットに名前が載っています。

原作小説は多くの読者を獲得し愛されていますが、その感想には『怖い』というものが散見されました。

その理由は、作中で効果的に描写される縄の存在感や、物語全体に漂う不気味さにあるようです。

主人公が知り合う女の子が異常に縄を怖がるため、読者もその恐怖に引っ張られるような側面もあり、もしかしたらこの縄を使ってこの子を…?というような、最悪のシナリオを連想させてしまうからかもしれません。

どんでん返しについては、ハッキリとした事は分かりませんでした。しかし、読み手によっていくつもの考察が見られ、

  • ・主人公は亡くなった娘を友人の子供に投影している
  • ・友人とその娘は主人公の自己保身のための妄想
  • ・主人公の娘は舅との子ではないか?

などと考える方々がいます。

りと
りと
このどれがラストになっても、どんでん返しに違いありませんね。

映画【遠い山なみの光】は、2025年9月5日公開となります。

原爆の悲しみも痛みも癒えぬ時代の女性が主人公となる物語です。

原作をご存じの方もそうじゃない方も、戦後80年という節目の今年公開される意味を感じながらご覧になってみませんか?

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