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『すべて真夜中の恋人たち』入江くんはなぜ「くん」呼びなのか?その理由を考察

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作家・川上未映子が書いた世界的にも評価の高い小説『すべて真夜中の恋人たち』をご存じですか?

川上未映子さんと言えば、2007年に芥川賞を受賞した『卵と乳』が有名ですが、その後もコンスタントに作品を発表し続けている人気作家さんです。

そんな川上さんの『すべて真夜中の恋人たち』には、入江くんというキャラクターが登場します。

読者のなかには

女性
女性
なぜ冬子という名前なのに『入江くん』呼びするのかしら?

という疑問を持たれた方もいるようです。

そこで今回は、なぜ入江くん呼びなのかについて調べてみました。

 

小説『すべて真夜中の恋人たち』の登場人物紹介『入江くん』呼びするのは誰?

やまこ
やまこ
主人公は入江冬子っていう名前だよね?なんで『入江くん』呼びされてるんだろう?

 

小説『すべて真夜中の恋人たち』の登場人物紹介

小説『すべて真夜中の恋人たち』には、主人公が内向的な事もあってか、登場人物があまり多くはありません。

そこで、1人1人の名前と主人公との関係性や性格など人物背景を見てみましょう。

まずは主人公である入江冬子は、内向的で他者との関係をなかなか上手く築けない人物です。

仕事も辞め、フリーランスで校閲者として働いているので、交流がある人の方が少ない現状のまま34歳を迎え孤独感を抱えています。

やまこ
やまこ
人付き合いが苦手だけど、誰ともつながりがない事に孤独を感じるのね?楽だなぁ、とは思わないタイプって事かな?

そんな冬子の高校時代の友人が早川典子です。

結婚して長野に住んでいる彼女は、主婦業に勤しむ生活を送りつつもその現状に虚しさも抱えています。

冬子とは15年ぶりの再会を果たす人物として描かれ、同級生でありながらライフステージが変わった友人と言えるでしょう。

やまこ
やまこ
ライフステージが変わると、それまでの関係性にも少し変化が生まれるよね。ずっとそのまま変わらない関係なんて、なかなか築くのは難しいんだよ…。

冬子と一番連絡を取っているのは、大手出版社の校閲局で働く石川聖です。

華やかでお洒落な聖は冬子と全く対照的な人物ですが、フリーの校閲者である冬子に仕事を依頼する担当者であり、また彼女とは一緒に吞んだりもする単なる仕事相手というだけではない関係を築いています。

やまこ
やまこ
あ!冬子にも友達いるんじゃない!始まりは仕事でも友人関係に繋がる人だっているもんね。

最後に、冬子が出会う男性・三束(みつつか)です。

50代半ばくらいに見える三束とはカルチャーセンターで出会い、冬子の失態を優しくフォローしてくれたことをきっかけに急接近する人物として描かれています。

常に孤独を抱えて過ごしている冬子にとって、三束との出会いはどんな変化をもたらすのでしょうか?

ここが小説『すべて真夜中の恋人たち』の主軸となってゆきます。

りと
りと
小説『すべて真夜中の恋人たち』というタイトル通り、この作品は恋愛小説です。

しかし、淋しさを抱える主人公が恋を得て幸せになる、と言う単純な物語ではありません。

やまこ
やまこ
多くの読者が、小説『すべて真夜中の恋人たち』に心惹かれた理由が何なのか、そこが気になるね。

 

小説『すべて真夜中の恋人たち』入江くんと呼ぶのは誰?

『入江くん』と呼ぶのは、冬子の友人・早川典子です。

他に『入江くん』と呼んでいた人物はいないようですが、女性である入江冬子に向かって『くん』呼びするのは少し珍しく感じます。

やまこ
やまこ
ご年配の方の中には、女性の名字に『くん』をつけて呼ぶことあるよね?
りと
りと
そうですね。または女性同士でも容姿や言動が男性的な女子の場合は、『くん』呼びされることもあるようですね。
やまこ
やまこ
あ~、女子高とかのノリだと特にありそうね。

年配でもない典子が『入江くん』と呼ぶのは少し珍しく感じますが、冬子はその呼び方を訂正することなく受け入れていますので、2人の間では問題ない事なんだろうと思われますね。

 

小説『すべて真夜中の恋人たち』のあらすじと入江を「くん」呼びする理由とは?

 

小説『すべて真夜中の恋人たち』をネタバレ紹介!

幼いころから他者との関係を築くのが上手くなかった入江冬子は、常に誰かの人生の脇役としてしか存在できない自分に強い孤独感を抱えながら暮らしています。

フリーの校閲者といえば、自分の力で人生を切り開いているキャリアウーマンのように見えますが、実際の冬子は仕事をくれる大手出版社勤務の石川聖としか会話がないような日々を送っているのです。

25歳の誕生日。

誰からも祝われない孤独感からか、冬子は真夜中の散歩に出ました。

真冬の深夜は空気がキンッと澄み、際立つ光の美しさに気付いた冬子はそこに自分への祝福を感じ、以降毎年誕生日の真夜中には散歩に出るようになったのです。

そんな冬子が出会ったのが三束でした。

今の単調な生活を少しでも変えたい、と赴いたカルチャーセンターで出会った三束と冬子は、徐々に距離を縮めて毎週喫茶店であって色々な話をするようになったのです。

きっかけが冬子の失態だったにもかかわらず、嫌な顔ひとつせず助けてくれた三束は、高校で物理を教えていると話し、その言葉に彼女は自分の誕生日に必ず行っている真夜中の散歩で見る光の話をします。

それは、冬子の心の中の柔らかい部分をさらけ出すような行為ともいえるもの。

そんな彼女の言葉に、

男性
男性
今度は光の話をしましょうね。

と言葉を返してくれた三束に冬子が惹かれるのも無理ない事でしょう。

週に一度の木曜日に加えて日曜日も会うようになった冬子が、三束からもらった本を何度も読み返し、募らせる恋の始まりに心を時負けせていた、そんな時でした。

冬子が、高校時代の友人・早川典子に会ったのは。

結婚して子供を授かったことでちっと母という関係性でしかなくなった夫の間に愛情は消え、今は2人して不倫していると話す典子。

あまりにあけすけな典子ですが、彼女もこんな内容の話をするのは誰でも良いわけではないようで、

女性
女性
私の人生の登場人物じゃなくなった貴女にだから話せたのよ。

というのです。

『私の人生の登場人物ではなくなった』というこの言葉は、常に他者の世界で存在感なく扱われ続けてきた冬子の心を抉るには十分な威力を持っていました。

典子の言葉を上手く消化できない冬子は、仕事も最小限まで絞って自宅に引きこもりベッドからも出ないような生活を送ります。

そんな生活でも思い出すのは三束のこと。

典子の言葉で傷ついた冬子が向かったあの喫茶店で、約束もしていないのに三束に出会えたことが、彼女の心を大きく占めていました。

これまで積極性を持って誰かと向き合った事の無い冬子でしたが、煮詰まり高ぶる心を始めてぶつけるべく行動を起こします。

初めて三束に電話をかけ、妻がいるのか、また休日の過ごし方など彼の生活に入り込む質問をぶつけたのです。

不躾ともいえるようなこれらの質問にも誠実に答えてくれた三束に、冬子は彼の誕生日に会う約束を取り付けます。

迎えた三束の誕生の日。

めいっぱいのオシャレをした冬子は、三束の誕生日を祝いながら共時間を過ごし、そして自分の気持ちを素直に伝えました。

女性
女性
貴方の事を愛しています。今度の私の誕生を一緒に過ごしてほしい。

昂る感情を抑えきれず、涙を零す彼女の言葉に何度も頷いてくれた三束に、気持ちが繋がり合う奇跡を感じた冬子でしたが、またしてもその帰路には彼女の幸せな気持ちを打ち壊す出来事が待っているのです。

それは冬子が引きこもっていた間、何度も連絡を取ろうとしていた聖から発せられた怒気でした。

帰り着いた冬子の自宅で待ち構えていた聖は、いつもと雰囲気の違う装いの冬子に『男と会っていたのか‼』と詰め寄り、

女性
女性
あんたを見てるとイライラする!

と言い放ったのです。

我に返った聖が謝罪しても冬子の砕け散った幸福は戻って来ません。

やっと始まると思っていた冬子の幸せな未来ですが、打ち砕かれた自尊心の前では、聖から貰ったオシャレな服で慣れないフランス料理を食べた三束との思い出が一気に霞んで見えたのです。

そうして、2年の月日が経ちました。

約束した2年前の冬子の誕生日、三束は現れませんでした。

約束のあの喫茶店で朝になるまで三束を待ち続けた冬子は、時間をかけて少しづつあの日の痛みを小さくしながら過ごしています。

そんな日々を過ごす冬子に、たった一度だけ送られた三束からの連絡は1通の手紙です。

そこには、三束が付いた嘘が綴られていて、最後に彼は『もう会わない』という決別の言葉で別れが告げられていました。

咄嗟に返事を出そうと手紙を書いた冬子ですが、しかし彼女は三束の住所を知りません。

彼との逢瀬で聞いていた彼自身の話にも嘘があった以上、冬子が三束を探し出すのは困難でしょう。

結局、書いた手紙は投函される事なく、冬子の手元に残ります。

それでも冬子は、三束との完全根別離を経て、新しい自分を手に入れました。

誕生日以外にも真夜中の散歩に出るようになったのです。

シンとした真夜中の散歩は、冬子にいろんな言葉を降ろしてくれます。

女性
女性
すべて真夜中の恋人たち

ふと思いついたこの言葉は冬子は中から消えようとせず、彼女はその言葉を見つめながら眠りにつくのでした。

 

小説『すべて真夜中の恋人たち』入江を「くん」呼びする理由を考察

小説『すべて真夜中の恋人たち』で、主人公・入江冬子の友人早川典子が『入江くん』呼びする明確な理由は記されていません。

しかしいくつかの考察が見つかりました。

まず1つ目は、学生時代からの延長なのではないか、という考え方です。

学生時代の呼び名というのは、人生を重ねてもそう変わらないものだったりします。

やまこ
やまこ
確かに!結婚して姓が変わった友達でも旧姓で読んじゃったりするもんね。

続いて、『入江くん』呼びがもたらす効果についての考察も見られました。

入江冬子は人付き合いが苦手で奥手な性格として描かれ、あまりにも存在感の無い主人公として物語が進むため、物語中盤で『入江くん』と呼ばれた瞬間

『え⁉入江って男の子なの?』

という一瞬のミスリードを生んでいるのではないか、という視点です。

実際読者の中には、『冬子っていう名前だけど男なの…?』と惑わされ、それまでの冬子の人生を男性として組み直し、三束との関係も多様性のひとつか?と考えられた方もいらっしゃいました。

女性の話しだと思って読んでいたものが『くん』呼びされただけで、それまでの展開を一転させる力がある、これは日本語ならではの面白い仕掛けとも言えるでしょう。

 

まとめ

今回は、川上未映子さんの著作『すべて真夜中の恋人たち』について、主人公の入江冬子がなぜ『入江くん』呼びされているのかについて調べてみました。

冬子の事を『入江くん』呼びするのは、彼女の高校時代の友人・早川典子です。

15年ぶりに会った典子は、当時と変わらず冬子の事を『入江くん』と呼ぶのですが、なぜ『くん』呼びなのかの明確な理由は示されていませんでした。

読者の考察では、学生時代からの呼称がそのまま続いているのではないか、というものの他、性別をもミスリードする一つの仕掛けなのではないか?というものが見られます。

冬子は『すべて真夜中の恋人たち』の主人公でありながら、積極性がなく誰よりも存在感を示さないキャラクターとして描かれているため、まるで透明人間の性別がどっちでもよいかのような印象を受けた方もいらっしゃいました。

小説という文字で作り上げる作品だからこその『くん』呼びから派生する仕掛けですが、11月に公開となる実写映画ではこの『入江くん』呼びがどんな効果をもたらすのか楽しみですね。

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